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古来より人々は異形なものを畏れてきました。妖怪とは何か?それは難しい質問かもしれません。河童や天狗、鬼など異形な者たちは分かりやすい存在ですが、得体の知れない現象や怪しい出来事も妖怪の範疇に含まれそうです。
日本は西洋のキリスト教社会と違い、八百万の神に見る多神教思想や「山川草木悉有仏性」〜すべてのものに仏性が宿るという精神が流れています。
なので、超常現象的な存在としての妖怪も私たちの身近に近いものとしてあったようです。
今回は、日本の社会で語り継がれてきた妖怪が登場する文献を調べてみました。
Wikipediaのリンクも貼ってありますのでご活用ください。
◆奈良時代
古事記〜ヤマタノオロチ、鬼、土蜘蛛など
日本書紀〜ヤマタノオロチ、人魚、天狗など
出雲国風土記〜鬼など
古くから登場する妖怪として、鬼、土蜘蛛、ヤマタノオロチなどの大蛇、人魚伝説、天狗などが登場していますね。ヤマタノオロチは洪水の化身で妖怪というよりも竜神の方が的確かもしれません。
![ヤマタノオロチ.jpg](https://tasogarekowai.up.seesaa.net/_imagesblog_aeftasogarekowai/E383A4E3839EE382BFE3838EE382AAE383ADE38381.jpg)
『日本略史 素戔嗚尊』に描かれたヤマタノオロチ(月岡芳年・画)
◆平安時代
地獄草紙〜地獄の鬼などが描かれた絵巻物
続日本記〜妖怪という言葉が初めて登場
日本霊異記〜奇譚や怪異の話が多いが、善因善果などを説教が中心。
今昔物語集〜天狗や鬼、怪異、奇異な話など
![地獄草紙.jpg](https://tasogarekowai.up.seesaa.net/_imagesblog_aeftasogarekowai/E59CB0E78D84E88D89E7B499.jpg)
平安時代は、仏教思想が栄えたことで説教説話の中での地獄の鬼や、怨霊や妖怪が登場するようになります。また、平安末期は国が荒れたことから末法思想が広がりました。物の怪、妖怪などの言葉も登場してきます。
◆鎌倉時代
大江山絵詞〜酒呑童子の絵巻物。源頼光の活躍。
土蜘蛛草紙絵巻〜土蜘蛛という妖怪の絵巻物。
源頼光などの活躍。
平家物語〜鵺退治の話や牛頭馬頭など
明月記〜猫又など
鎌倉時代は武士の台頭と共に妖怪退治の話も頻繁に出てきます。源頼光の妖怪退治が有名ですね。
◆室町時代
百鬼夜行図〜百鬼夜行など
付喪神絵巻〜付喪神
室町時代には、絵巻物として百鬼夜行や付喪神など面白い描写のものが登場します。百鬼夜行図は室町時代から明治・大正時代まで数多く制作されていますが、平安時代に人々に恐れられていた鬼や異形の者たちの行列を指している「百鬼夜行」とは別のイメージのようです。
付喪神とは、年末の大掃除の際に捨てられた古道具たちが「付喪神」となり、人間を襲い悪さをするというものです。
さて、江戸時代になると一気に怪談本や妖怪本が増えます。怪談を一話話す毎に蝋燭を消していくという百物語が大流行した時代でもありました。
馴染みのある妖怪がこの時代にほぼ出揃います。
![Hyakki-Yagyo-Emaki_Tsukumogami_1.jpg](https://tasogarekowai.up.seesaa.net/_imagesblog_aeftasogarekowai/Hyakki-Yagyo-Emaki_Tsukumogami_1.jpg)
◆江戸時代
画図百鬼夜行〜1776年に刊行された鳥山石燕の妖怪画集。河童や天狗など。
今昔画図続百鬼〜画図百鬼夜行の続編。大首など水木しげるにも影響。
今昔百鬼拾遺〜これも鳥山石燕の作品。創作も多く含まれている。
百器徒然袋〜1784年の鳥山石燕の作品。付喪神が多く描かれている。
百怪図巻〜佐脇嵩之の絵巻物。ぬれ女、ぬらりひょんなどが描かれている。
蕪村妖怪絵巻〜与謝蕪村の妖怪絵巻。漫画に近い画風。化け猫など。
仙境異聞〜江戸の学者、平田篤胤の記録。神隠しにあった寅吉の面談を記録。
絵本百物語〜1841年刊行の日本の奇談集。死神や幽霊船など。
![絵本百物語.jpg](https://tasogarekowai.up.seesaa.net/_imagesblog_aeftasogarekowai/E7B5B5E69CACE799BEE789A9E8AA9E.jpg)
絵本百物語
御伽草子〜口頭で伝わってきた民間の説話集。百鬼夜行の話など。
太平記〜有名な古典文学だが、鵺などの妖怪が登場する。
臥雲日件録〜相国寺の瑞渓周鳳の日記。八百比丘尼の話が登場する。
諸国百物語〜作者不詳の怪談集。百物語の先駆けともいうべき本。
雨月物語〜上田秋成によって江戸時代後期に著わされた読本。鬼が登場。
耳袋〜旗本の根岸鎮衛が著わされた読本。奇談以外にも事件や説話も多い。
曽呂利物語〜秀吉に命じられた曾呂利新左衛門が語ったとされる物語。
稲生物怪録〜稲生武太夫の所に現れた様々な化物が30日間出没した。
鳥山石燕の画集は有名です。また佐脇嵩之の妖怪絵巻もカラーでリアルなものになっています。仙境異聞は、このブログでも取り上げた天狗に拐われた寅吉の話です。
→天狗にさらわれた少年〜仙童寅吉と平田篤胤
耳袋は、現代の中山市郎&木原浩勝「新・耳袋」のタイトルにも使われていますね。
![怪談.jpg](https://tasogarekowai.up.seesaa.net/_imagesblog_aeftasogarekowai/E680AAE8AB87.jpg)
「遠江の国堀越と云ふ人婦に執心せし事」
◆明治時代
新形三十六怪撰〜月岡芳年による妖怪画。
怪談〜小泉八雲の怪奇文学集。雪女や船幽霊など
妖怪学講義〜哲学者井上円了の講義録。迷信を打破する目的で妖怪を研究。
遠野物語〜柳田国男の説話集。
月岡芳年による妖怪画
![小泉八雲井上円了柳田国男.JPG](https://tasogarekowai.up.seesaa.net/_imagesblog_aeftasogarekowai/E5B08FE6B389E585ABE99BB2E4BA95E4B88AE58686E4BA86E69FB3E794B0E59BBDE794B7.JPG)
明治になると、小泉八雲や柳田国男のように文学作品としても評価が高いものや、井上円了のように学問としても妖怪を研究する(批判的な側面からですが)ようになって民俗学としても妖怪は研究対象となってきました。また昭和に入ってからの水木しげる先生などの妖怪も忘れては行けませんね。現代の妖怪のイメージを決定づけた功労者であると思います。
![地獄草紙.jpg](https://tasogarekowai.up.seesaa.net/_imagesblog_aeftasogarekowai/E59CB0E78D84E88D89E7B499.jpg)
平安時代は、仏教思想が栄えたことで説教説話の中での地獄の鬼や、怨霊や妖怪が登場するようになります。また、平安末期は国が荒れたことから末法思想が広がりました。物の怪、妖怪などの言葉も登場してきます。
◆鎌倉時代
『大江山絵巻』 |
大江山絵詞〜酒呑童子の絵巻物。源頼光の活躍。
土蜘蛛草紙絵巻〜土蜘蛛という妖怪の絵巻物。
源頼光などの活躍。
平家物語〜鵺退治の話や牛頭馬頭など
明月記〜猫又など
鎌倉時代は武士の台頭と共に妖怪退治の話も頻繁に出てきます。源頼光の妖怪退治が有名ですね。
◆室町時代
百鬼夜行図〜百鬼夜行など
付喪神絵巻〜付喪神
室町時代には、絵巻物として百鬼夜行や付喪神など面白い描写のものが登場します。百鬼夜行図は室町時代から明治・大正時代まで数多く制作されていますが、平安時代に人々に恐れられていた鬼や異形の者たちの行列を指している「百鬼夜行」とは別のイメージのようです。
付喪神とは、年末の大掃除の際に捨てられた古道具たちが「付喪神」となり、人間を襲い悪さをするというものです。
さて、江戸時代になると一気に怪談本や妖怪本が増えます。怪談を一話話す毎に蝋燭を消していくという百物語が大流行した時代でもありました。
馴染みのある妖怪がこの時代にほぼ出揃います。
![Hyakki-Yagyo-Emaki_Tsukumogami_1.jpg](https://tasogarekowai.up.seesaa.net/_imagesblog_aeftasogarekowai/Hyakki-Yagyo-Emaki_Tsukumogami_1.jpg)
◆江戸時代
画図百鬼夜行〜1776年に刊行された鳥山石燕の妖怪画集。河童や天狗など。
今昔画図続百鬼〜画図百鬼夜行の続編。大首など水木しげるにも影響。
今昔百鬼拾遺〜これも鳥山石燕の作品。創作も多く含まれている。
百器徒然袋〜1784年の鳥山石燕の作品。付喪神が多く描かれている。
百怪図巻〜佐脇嵩之の絵巻物。ぬれ女、ぬらりひょんなどが描かれている。
蕪村妖怪絵巻〜与謝蕪村の妖怪絵巻。漫画に近い画風。化け猫など。
仙境異聞〜江戸の学者、平田篤胤の記録。神隠しにあった寅吉の面談を記録。
絵本百物語〜1841年刊行の日本の奇談集。死神や幽霊船など。
![絵本百物語.jpg](https://tasogarekowai.up.seesaa.net/_imagesblog_aeftasogarekowai/E7B5B5E69CACE799BEE789A9E8AA9E.jpg)
絵本百物語
御伽草子〜口頭で伝わってきた民間の説話集。百鬼夜行の話など。
太平記〜有名な古典文学だが、鵺などの妖怪が登場する。
臥雲日件録〜相国寺の瑞渓周鳳の日記。八百比丘尼の話が登場する。
諸国百物語〜作者不詳の怪談集。百物語の先駆けともいうべき本。
雨月物語〜上田秋成によって江戸時代後期に著わされた読本。鬼が登場。
耳袋〜旗本の根岸鎮衛が著わされた読本。奇談以外にも事件や説話も多い。
曽呂利物語〜秀吉に命じられた曾呂利新左衛門が語ったとされる物語。
稲生物怪録〜稲生武太夫の所に現れた様々な化物が30日間出没した。
鳥山石燕の画集は有名です。また佐脇嵩之の妖怪絵巻もカラーでリアルなものになっています。仙境異聞は、このブログでも取り上げた天狗に拐われた寅吉の話です。
→天狗にさらわれた少年〜仙童寅吉と平田篤胤
耳袋は、現代の中山市郎&木原浩勝「新・耳袋」のタイトルにも使われていますね。
![怪談.jpg](https://tasogarekowai.up.seesaa.net/_imagesblog_aeftasogarekowai/E680AAE8AB87.jpg)
「遠江の国堀越と云ふ人婦に執心せし事」
◆明治時代
新形三十六怪撰〜月岡芳年による妖怪画。
怪談〜小泉八雲の怪奇文学集。雪女や船幽霊など
妖怪学講義〜哲学者井上円了の講義録。迷信を打破する目的で妖怪を研究。
遠野物語〜柳田国男の説話集。
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月岡芳年による妖怪画
明治になると、小泉八雲や柳田国男のように文学作品としても評価が高いものや、井上円了のように学問としても妖怪を研究する(批判的な側面からですが)ようになって民俗学としても妖怪は研究対象となってきました。また昭和に入ってからの水木しげる先生などの妖怪も忘れては行けませんね。現代の妖怪のイメージを決定づけた功労者であると思います。